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Challenges to new possibilities ~What the latest technologies and techniques can bring~ 『Experience with Image Enhanced Endoscopy 〜Practicality in ERCP〜』
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岡山大学病院 松本 和幸 先生
英語でのセッションとして行われた、JDDW2024 ランチョンセミナーの内容を日本語に翻訳したレポートです。
本講演では、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)・経口胆道鏡(POCS)手技におけるTXIおよびRDIの有用性について、岡山大学病院での症例を交えてご紹介いただいております。#ERCP-アクセス #ERCP-乳頭処置 #ERCP-結石
 
ERCP関連手技におけるIEEの有用性
TXIはオリンパス社独自のIEEであり、WLIをtextureとbaseの情報に分割後、それぞれに対して「構造強調」と「明るさ強調・補正」の処理を行ってから再合成することで、粘膜の表層や血管の構造・色調を強調している。このようにして得られた画像はTXIモード2と呼ばれ、さらに「色彩強調」の処理を加えた画像はTXIモード1と呼ばれる。TXIは上記の特性により凹み構造に対する視認性を向上させることから、総胆管・膵管開口部などの凹み位置の把握が容易になることが期待され、ERCP手技においては特にTXIモード1の使用が望ましいと考えられる。
谷坂ら1)は、胃切除後のRoux-en-Y再建術を受けた患者群を対象にした多施設共同の後ろ向き研究を実施し、シングルバルーン小腸内視鏡を用いたERCP(SBE-ERCP)での胆管へのカニューレ挿入におけるTXIの有用性を報告している。本研究により、TXI使用時ではWLI使用時と比較して、カニューレ挿入の成功率に差がみられなかったが、カニューレ挿入時間は有意に短縮されたことが示された。また、豊永ら2)は、膵頭十二指腸切除術後に膵管空腸吻合部狭窄による膵炎が発現したためSBE-ERCPを施行し、TXIを用いて膵管空腸吻合部狭窄部位の同定に成功した症例を報告している。
症例提示:内視鏡的乳頭切除術(EP)後に胆管・膵管へのステント留置を行った症例
当院では、EPの際は水中で腫瘍をスネアリングし、乳頭が腸内腔へ伸長しないよう工夫している。また、CO₂送気は腫瘍切除後ではなくクリッピング終了後に行うことで、開口部の創傷を防止している。EP施行後は画像出力をWLIからTXIに切り替え、開口部の凹み構造 や膵液の流出点を目印に総胆管・膵管開口部の位置を把握することが可能であった(図1)。同定した総胆管・膵管開口部に対し、膵管、総胆管の順にカニューレ挿入とプラスチックステント留置を行い、ゲル状の吸収性局所止血材を創部に適用して手技を終了した。
 
           図1 TXIモードにより内視鏡的乳頭切除術(EP)後の総胆管・膵管開口部を同定 : WLI(a)、TXIモード1(b)
ERCP・POCSにおけるRDIの有用性
RDIはred、amber、greenの狭帯域光を用いたオリンパス社独自のIEEであり、redの狭帯域光は深層血管の深部まで、amberは深層血管中のヘモグロビンまで、greenは表層に近い血管まで到達し、それらを組み合わせることで深部組織のコントラストを形成して出力する。RDIにはモード1からモード3までの3種類があり、それぞれの特性に応じた効果を得られることが期待される。ここでは、ERCP・POCS手技におけるモード1およびモード3の有用性を紹介する。
01RDIモード1:ERCPにおける止血処置での出血点の確認
RDIモード1を使用することにより深部血管の視覚化が可能になり、特に手技中の出血処置において出血点を特定する際に効果を発揮すると考えられ、その有用性は複数論文で報告されている3,4)。
症例提示:内視鏡的乳頭切開術
カテーテルを用いて出血中の乳頭を洗浄後、生理食塩水で凝血を取り除き、RDIモード1に切り替えて乳頭を観察した。その結果、出血点が胆管開口部付近であることが明瞭に確認できたため(図2)、胆管ステント留置後、出血点の周囲に高張食塩水エピネフリン(HSE)を注射することで、短時間での止血に至った。
 
           図2 ERCPにより乳頭部の出血点を観察:WLI(a)、RDIモード1(b)
02RDIモード3:POCSにおける胆管への視認性向上
RDIモード3は表層血管の視覚化が可能になることに加えて、狭帯域光の特性により黄色の胆汁を無彩色または低彩度の色に変化した画像として出力されるため、特にPOCS手技において明確な視野を得たい場合に有用であると考えられる。
症例提示:胆嚢癌のため腹腔鏡補助下で胆嚢切除後、腹部CTにより総胆管および残存胆管に壁肥厚を認めた症例
POCSにより総胆管に扁平な隆起領域を認めたため、狭帯域光観察(NBI)に切り替えて観察したところ、悪性を示唆する異常な血管を認めたが、胆汁により視認性が不良であった。そのため、NBIからRDIモード3へ切り替え、胆汁の彩度を下げて観察することにより、異常血管に対して明確な視野を得ることが可能となった(図3)。
 
           図3 POCSにより総胆管の扁平隆起を観察:NBI(a)、RDIモード3(b)
症例提示:体重減少を主訴とし、MR胆管膵管撮影(MRCP)およびERCPにより総胆管門脈に複数の狭窄を認めた症例
本症例はIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)が疑われたが、血清レベルおよびIgG4レベルが標準範囲内であり、腫瘍マーカの増加もわずかであったため、POCSによる確認が行われた。RDIモード1では表層の血管を十分に確認できなかったが、RDIモード3を使用することにより拡張した血管を認め(図4)、悪性腫瘍である可能性が考慮されたが、遠位端に粘膜下腫瘍(SMT)様の領域が確認され、IgG4-SCに近い良性腫瘍であることが示唆された。RDIモード1を使用して総胆管肺門部狭窄から生検を採取し、病理学的検査を行った結果、悪性所見は得られなかったもののIgG4陽性リンパ球の集簇を認め、最終的にIgG4-SCと診断された。本症例は胆管へのステント留置後1ヵ月のフォローアップ時に狭窄の顕著な改善を認めており、IgG4-SCの診断結果と一致した経過を示した。
 
           図4 POCSにより総胆管の表層血管を観察: RDIモード1(a)、RDIモード3(b)、NBI(c)
参考文献
- Tnisaka Y, et al. Dig Endosc 2024; 36(9): 1030-1040
 - Toyonaga H, et al. Endoscopy 2022; 54(S 02): E1062-E1063
 - Inoue T, et al. Endoscopy 2022; 54(S 02): E778-E779
 - Kimura Y, et al. DEN Open 2023; 3(1): e215
 
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