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困難な結石症例を安全に簡便に行うために~StoneMasterVを用いたEST,EPLBD手技のコツ~

はじめに

  • 東京医科大学消化器内科 糸井 隆夫 先生

    StoneMaster Vに関連するReportをご執筆いただきました。

1本のデバイスでESTとEPLBD手技が可能なStoneMaster Vの登場

EPLBDとは?

 ラージバルーンを用いた内視鏡的乳頭バルーン拡張術(Endoscopic papillary large-balloon dilation:EPLBD)は、近年、結石除去におけるひとつのテクニックとして、本邦で急速に普及している。EPLBDには、乳頭処置に関する手技が、少なくとも3種類ある点に注意すべきである。一つめは、Ersozら1)によって2003年に初めて報告されたオリジナルのEPLBDである。この論文では、EPLBDの対象を「E S Tを行っても除石が困難な症例」と限定しており、EPLBDをEST後の乳頭に対して行っている。さらに注目すべき点は、施行したESTの切開長を「乳頭開口部からはちまきひだ近傍まで」とし、“十分な”ESTを行っていることである。二つめは、以前に行ったEST後の再発例や初回ESTのみでの除石が困難で別のセッション(初回からの経過時間は問わない)で行うEPLBDである。基本的には、一つめと同様な手技であると考えている。三つめは、ESTを付加することなく行うEPLBDである。

EPLBDでESTは必要?

 まず、オリジナルのEPLBDのメカニズムを、私案を交えて考えてみたい。
 ラージバルーンで乳頭開口部を開大する目的は、結石除去のために胆管口を広げることである。径8mm程度の通常の乳頭拡張(EPBD)バルーンを用いる場合には、最大にバルーン拡張しても、多くの症例で均等にバルーンによって広げられた乳頭を十分に観察でき、かつバルーン口側がはちまきひだを越えることはない。すなわち乳頭括約筋が部分的に裂けても、乳頭自体が“裂ける”という現象が起こらない。一方、径15mmや18mmなどのラージバルーンによる乳頭拡張では、乳頭の元の形態が分からなくなるほど乳頭開口部は過拡張され、フル拡張時には、はちまきひだを越えてバルーンが広がっていく。すなわち、過拡張により乳頭が“裂ける”ということが起こり得るのである。「EPLBDの前にESTを行うべきである」という理論は、過拡張の際に正しく胆管方向(いわゆる12時方向(下図))にバルーンが広がるように、“切りシロ”をつけるということである。この理論は、まさに分娩時の会陰切開と同様である。産科領域においても経験と理論により裏付けられた前処置により、母体に安全な分娩ができるのである。
 この“切りシロ”は、出血や穿孔といった偶発症だけでなく、EPLBDに伴う膵管口への機械的圧排を防ぐことで、術後急性膵炎発症も減少させる可能性がある。現在海外では、EPBDではESTに比べて術後急性膵炎が多いということ、そしてRCTで死亡例が出た2)ことからもほとんどEPBDが行われていない。術後急性膵炎の発症の可能性は、ESTを付加しないEPLBDも、理論的にはEPBDと変わらないといえる。
 ESTを付加しないEPLBDに関しては、これまでに前向きや後ろ向きの研究結果が出ているが、その根拠は十分とはいえず、意図的に“ESTを付加しない”EPLBDが正当化されるかは議論の余地がある。当施設でも、理由がありESTができなかった1症例で致死的な重症膵炎を経験しており、EPLBDが安全に普及するためにも可能な限り“ESTに引き続くEPLBD”(当科では、単なるEPLBDと区別するためにESLBDと呼んでいる3))を行うことを推奨したい。
 興味深いことに、EPBD死亡例によりRCTを中止し、その論文2)の中でEPBDを否定したDr.DiSarioさえも、同様な理由から“EST後のEPLBDは容認できる”としている4)

[文献]

  1. Ersoz G, et al. Biliary sphincterotomy plus dilation with a large balloon for bile duct stones that are difficult to extract. Gastrointest Endosc 2003;57:156-9.
  2. DiSario JA, et al. Endoscopic balloon dilation compared with sphincterotomy for extraction of bile duct stones. Gastroenterology 2004;127:1291-9.
  3. Itoi T, et al. Endoscopic sphincterotomy combined with large balloon dilation can reduce the procedure time and fluoroscopy time for removal of large bile duct stones. Am J Gastroenterol 2009;104:560-5.
  4. DiSario JA. Endoscopic balloon dilation of the sphincter of Oddi for stone extraction in the elderly: is the juice worth the squeeze? Gastrointest Endosc 2008;68:483-6.

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