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大腸内視鏡検査における画像強調内視鏡(IEE)の活用
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国立がん研究センター中央病院
豊嶋 直也 先生
はじめに
大腸内視鏡検査において腺腫発見率(adenoma detection rate:ADR)を向上させることは、Interval cancer / Post-colonoscopy colorectal cancer(PCCRC)を減少させる上で極めて重要である。日本から報告された大規模データ(Japan Polyp Study)では、PCCRCは右側結腸に多く、特に平坦病変の見逃しが主要因として関与することが示されている1)。このため、右側結腸・平坦病変に対する視認性向上が質の高い大腸内視鏡診療に不可欠である。
その解決策として、画像強調内視鏡(image-enhanced endoscopy:IEE)が注目されている。IEEは、粘膜表面の色調・微細構造・血管パターンを強調し、大腸病変の検出・識別を支援する技術である。本稿では、IEEの中でも特にTexture and Color Enhancement Imaging(TXI)およびNarrow-Band Imaging(NBI)に焦点を当て、最新のエビデンスを概説する。
TXI:白色光ベースの画像強調技術
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TXIは、白色光画像を構造(texture)と色調(base)に分離し、それぞれに対して構造強調・明度補正・色調補正を行った後に再合成することで、背景粘膜と同化しやすい病変の視認性を向上させる技術である。TXIには「構造+明度強調」のTXIモード2と、さらに色調強調を加えたTXIモード1が存在し、観察目的に応じて使い分けることが可能である。
複数の研究により、TXIは白色光(WLI)と比較して非ポリープ型病変の視認性を向上させることが報告されている2.3)。また、鋸歯状病変を対象とした研究では、TXIはWLIより高い視認性を示し、特に非拡大観察において検出能改善に寄与する可能性が示されている4)。 さらに臨床研究においても、TXIが病変検出率向上に寄与するエビデンスが蓄積しつつある。国内のSakamotoらによる多施設後向き観察研究では、TXIはWLIと比較してADRおよび右側大腸における見逃し率(Ac-AMR)の改善を示した5)。一方、**AntonelliらおよびYoungらによる前向きランダム化比較試験(RCT)**では、TXIはWLIに比べてADRおよび平均腺腫発見数(APC/MAP)を有意に向上させており、特に微小病変・平坦病変・右側病変の検出能向上が示されている6.7)。このように、後向き観察研究と前向きRCTの双方でTXIの有効性が確認されつつある点は、臨床的意義が大きいといえる。
TXIの臨床的有用性を裏付ける最も大きなエビデンスとして、多施設共同ランダム化比較試験である deTXIon study(Toyoshima et al., Gastroenterology 2024)が挙げられる8)。本試験では956例を対象にTXIとWLIが比較され、主要評価項目である腫瘍性病変の平均発見数には統計学的差を認めなかったものの、平坦型病変発見率(76.5% vs 70.3%, p=0.036)およびポリープ発見率(82.5% vs 74.4%, p=0.003)でTXIが有意に優れるという重要な結果が得られた。 -
特に注目すべきは、平坦型病変の発見能向上である。平坦型腺腫や鋸歯状病変は右側結腸に多く、PCCRCの主要因と考えられている1)。したがって、TXIによる平坦病変の発見率向上は、PCCRCリスク低減に直結する臨床的意義を有する。deTXIon studyの副次解析でもSSL発見率がTXIで高い傾向を示しており、右側大腸病変におけるTXIの有用性を支持する結果となった。
加えて本試験では、両群とも EVIS X1 システムを使用していたが、特に CF-EZ1500DL/DI スコープが搭載する EDOF(Extended Depth of Field)技術と高感度CMOSイメージセンサーの影響が極めて大きい点が指摘されている。EDOF技術は、近点・遠点にピントを合わせた2つの画像を合成することで広い被写界深度を実現し、観察時に常に明瞭なフォーカスを得やすい構造となっている。また、高感度CMOSセンサーはノイズが少なく、HDを上回る高画質(HQ画質)を提供する。
これら高性能スコープにより、WLIでも従来より高い検出性能が担保されていた可能性がある。それにもかかわらず、平坦型病変においてTXIがWLIを上回った点は、TXIが持つ病変コントラスト強調効果が、最新世代の高画質WLIをも凌駕しうることを示唆している。
以上より、TXIは「平坦病変・右側病変など見逃しやすい病変の検出向上に特に強みを持つIEE」として位置づけられ、PCCRC予防において重要な技術と考えられる。
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