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EndoBRAIN Case Report EndoBRAIN-EYEを活用した クリニックにおける大腸内視鏡検査 -「第2の目」のサポートによる病変見逃しの回避-

はじめに

  • 社会医療法人交雄会メディカル さっぽろ大通り内視鏡クリニック 野村 昌史 先生

    病変検出をサポートするEndoBRAIN-EYEの使用経験をご執筆いただきました。
    実際の臨床現場での活用例について、病変を検出した画像も踏まえて詳しく解説いただくと同時に、EndoBRAINーEYEを使用する際の工夫についてもご紹介いただいております。

はじめに

 大腸内視鏡検査は生涯の中で1度受ければ終わりというものではなく、がん検診として繰り返し受ける機会が訪れる。したがって辛い検査の記憶が次の検査を躊躇させ、そのことで病変の早期発見の機会が奪われてしまうということは絶対に避けなければならない。当院では辛くない検査を実施するため、極細径スコープPCF-PQ260L/Iをルーチン機として使用している。PCF-PQ260L/Iは拡大機能を有しないため、白色光+ NBI(narrow band imaging)通常観察を基本に、必要に応じてインジゴカルミン撒布を追加している。
 大腸内視鏡検査を行うに当たってのもう一つ重要な点として、病変の的確な拾い上げ、すなわち見逃しのない検査の施行が挙げられる。病変の見逃し、特にがんの見逃しは被検者の人生を大きく変えてしまうため、何としても避けなければならない。今や大腸がんはがん罹患数の1位、がん死亡数の2位(女性は1位)を占めているが、発見したポリープをすべて摘除することによりがんの発生のみならずがんによる死亡率が低下することが報告されており1)-3)、がんの前駆病変となりうる腺腫やSSL(sessile serrated lesion)を確実に捉えることも大きな意味を持つ。
 検査後の見直しも含めて複数の目で画像を見ることができれば見逃し対策となることは言うまでもないが、そのような体制をとることができる施設は限られており、一般のクリニックにおいては現実的ではない。このような状況を打破する新たなツールとしてAI(artificial intelligence)によるリアルタイムでの内視鏡画像診断支援を行うソフトウェアEndoBRAIN-EYEが開発され、2021年5月にはバージョンアップがなされた。

EndoBRAIN-EYEを用いた検査の実際

 EndoBRAIN-EYEは、検査中の画像をAI がリアルタイムに解析し、ポリープ・がんなどの病変候補を検出した際には音と画面上のマークで警告してくれる支援ツールである。EndoBRAIN-EYE用に別のモニターが必要となるが、2画面を同時に見ることができる 環境を準備できれば、検出部位の確認に余計な時間を取られることはない。今回は、われわれがルーチン機として使用しているPCFPQ260L/I との組み合わせでEndoBRAIN-EYEを使用した。使用期間中、術者が気付かずにEndoBRAIN-EYEだけが指摘した病変は なかったが、術者が気付いた病変すべてをEndoBRAIN-EYEは拾い上げていた。今回の経験のまとめを以下に列記する。

EndoBRAIN-EYEは、術者が気付いた病変すべてを検出した。

今回の使用期間中、術者が気付かずにEndoBRAIN-EYEが指摘した病変はなかったが、すべての検査において術者が関心を寄せず EndoBRAIN-EYEが検出した変化が必ずあった。このような変化の中に頻度は低いものの重要な病変が含まれる可能性はあると思われた。

EndoBRAIN-EYEは、わずかな高さの変化を捉えていた。

 このことは正常粘膜とあまり色調差のない側方発育型腫瘍(laterally spreading tumor:LST)やSSLを見つけ出す際に大きなアドバンテージと思われた。反面、拡張した静脈による隆起、吸引による粘膜隆起(いわゆるサクションポリープ)、脱気により生じる粘膜のたるみやヒダの太まりなどにも反応するが、病変かどうかの判断に時間を要することはなく、検査時間が長くなるなどの支障をきたすことはなかった。

EndoBRAIN-EYEは、色調変化に反応した。

 色調の違いはAI のサポートをさほど必要としない領域かもしれないが、病変自体を認識する前の(粘液が付着して病変自体が見えない状態という意味)過形成性ポリープ、SSLといった鋸歯状病変に付着した粘液やコールドポリペクトミーの際に生じる出血などに反応した。

残便や残渣にも少し反応した。

 それほど頻度は高くないが、EndoBRAIN-EYEは憩室からの落下便などの残便や野菜などの残渣に反応した。ただしこれらの変化は一瞬で判別可能なため、問題となることはなかった。

 ここまで述べたようにEndoBRAIN-EYEは病変以外の変化にも反応するが、それほど高い頻度ではなく、「第2の目」がある安心感こそあれ煩わしさなどの負の感覚が生じることはなかった。

検出例①

  • 病変候補検出時は音と画面上のマークで警告

  • NBI 観察時は自動で検出モードOFF

  • 検出例②

    複数病変候補を矩形表示することが可能であった

  • 検出例③

    内視鏡画像中央部のみならず
    周縁部の病変も拾上げることが可能であった

  1. Winawer SJ, Zauber AG, Ho MN, et al.: Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. The National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med 329; 1977-1981, 1993
  2. Zauber AG, Winawer SJ, O’Brien MJ, et al.: Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med 366; 687-696, 2012
  3. Løberg M, Kalager M, Holme Ø, et al.: Long-term colorectal-cancer mortality after adenoma removal. N Engl J Med 371; 799-807, 2014

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