第2回 耳・鼻・喉のしつこい「痛み」にどう対応
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耳・鼻・喉において、しつこい「痛み」の原因となり得る疾患
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耳鼻咽喉科クリニックの医師が診る身体の部位は、聴覚や嗅覚といった感覚を司っていたり、水分や食物を飲み込むことに深く関与しています。そのため、これらの部位に痛みを感じると、患者は強い不快感を感じます。また、痛みが長く続けば、患者のQOL(生活の質)は大きく損なわれることになります。
それだけに耳鼻咽喉科クリニックの医師には、痛みの原因を的確に探り出し、それを長引かせないようにする手腕が求められます。とはいえ近年は、以前は鑑別に挙がらなかった疾患が痛みの原因となっていたり、複合的な要因が痛みを長引かせたりする例があることも明らかになっています。そこで今回は、耳・鼻・喉を対象に、しつこい痛みの原因となり得る疾患を改めて確認するとともに、それらにどう対応すべきかを考えます。
耳の痛み◎全身疾患と思われた病気が影響?
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耳の痛みの原因としてまず思い浮かぶのが、中耳炎や外耳炎でしょう。ただし、一般的な中耳炎などであれば、診断や治療に難渋するケースは多くありません。これに対し注意すべき中耳炎としては、ANCA関連血管炎性中耳炎が挙げられます。ANCA関連血管炎性中耳炎は、全身疾患として発症することが多い自己抗体による血管炎が、中耳で発症するものです。
2015年にまとめられた診断基準によれば、抗菌薬が効かない進行性の難治性中耳炎、進行する骨導閾値の上昇、ANCA抗体価陽性などが特徴です。聴力に影響するだけに早期発見が重要で、治療にはステロイドと免疫抑制剤の併用が有効とされています。
また、ウイルスが引き起こす帯状疱疹が、耳介や外耳道に強い痛みをもたらすこともあります。耳性帯状疱疹やラムゼイ・ハント症候群と呼ばれる病態で、痛みを感じる部位に水疱を生じたり、顔の片麻痺や回転性めまい、難聴などを伴ったりすることが知られています。治療は、抗ウイルス薬の内服が基本となります。この病気も、重症化すると後遺症を招く可能性があるので、早期の診断・治療が重要です。このほか数は多くありませんが、緑膿菌などによる重篤な感染症である悪性外耳道炎や、外耳道がんや耳下腺がんといった悪性腫瘍が痛みの原因となることもあります。
鼻の痛み◎最近注目される「ドライノーズ」
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鼻に痛みを感じる疾患の代表例は、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎です。これらに加え、ウイルスの感染が鼻に痛みをもたらすことがあります。例えば単純ヘルペス感染症は、水疱が唇にできやすいことが知られていますが、鼻の中にできることもあります。また、帯状疱疹ウイルスへの感染が鼻の周辺に症状を引き起こすこともあって、その場合は鼻の痛みだけでなく顔面痛が生じたり、視力低下などの眼症状が生じたりします。いずれも治療には、抗ウイルス剤が用いられます。
一方、鼻に痛みをもたらす病態として、最近は鼻乾燥(ドライノーズ)も注目されています。粘膜の乾燥が、かゆみや鼻出血、嗅覚低下などを引き起こす病気で、人によっては強い痛みを伴うことがあります。空気の乾燥だけでなく、機械的な刺激や化学物質などが誘因となる例も見られます。これらの誘因を排除することはもちろんですが、加湿器で湿度を高めたりマスクを着用することで、鼻粘膜の乾燥を避けることが大事です。
喉の痛み◎緊急対応が必要な原因疾患も
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喉は耳や鼻よりも外界からの刺激を受けやすく、ウイルスや細菌などに曝露される機会も多いのが特徴です。また、多くの神経が存在するため、喉は痛みを感じやすい部位でもあります。一般的な風邪や咽頭炎、扁桃炎などの感染症であれば対応は比較的容易ですが、中には思わぬ疾患が、喉の痛みの要因となっていることもあります。
その一つが胃食道逆流症(GERD)です。胃酸の逆流が胸焼けを起こすことが知られていますが、喉の痛みを訴える患者も少なくありません。また、副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎からの後鼻漏が、喉の痛みを引き起こすこともあります。悪性腫瘍の初期症状として、喉の痛みが生じるケースも見られます。耳や鼻に生じるがんはまれですが、咽頭がんや喉頭がんはそれほど珍しくありません。鑑別の際は念頭に置くことを忘れないようにしたいものです。
このほか緊急対応の可能性がある点に注意が必要な疾患に、急性喉頭蓋炎があります。細菌感染が喉頭蓋の腫れを引き起こして気道を塞ぎ、時には呼吸困難や窒息に至ることも。初期の段階では喉の痛みや嚥下痛などが見られますが、唾液が飲み込めずよだれが流れ出たり、喘鳴が見られる際には、この病気を疑います。治療は入院した上で抗菌薬やステロイドの投与が行われますが、効果が見られない場合には気管切開などの外科的処置が行われることもあります。
痛みからの解放で患者満足度を高める
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患者が訴える痛みを解消するにはまず、これまで述べてきたような原因疾患の治療を進めます。しかし痛みの治療は、それだけで済むケースばかりではありません。痛みのタイプによって、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)やアセトアミノフェンをはじめ、三環系抗うつ薬やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの薬剤を効果的に使い分けていくことが求められます。
また、治療がスムーズに進まないしつこい痛みには、患者の心理状況や周囲を取り巻く社会状況が影響していることもあります。そのような場合、認知行動療法に代表される心理療法も治療の選択肢として検討する必要があるでしょう。上記の薬剤使用や心理療法などについては、『慢性疼痛診療ガイドライン』(慢性疼痛診療ガイドラインワーキンググループ編)が詳しい解説を掲載しています。患者を痛みから解放し、その満足度を高めるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
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